ミステリー狂の歌1-読書感想文と苦い記憶-
私が「大学生から2014年くらいまでの完全なるブランク期間」を除き、かなりの野球狂であることは既知のこととなってきたが、実は同じくらいのミステリー狂でもある。小1で江戸川乱歩に入門、小3でシャーロック・ホームズ、エラリイ・クイーンなどの古典は読破、その後、国内外のミステリーを読み漁り続けること○○年・・・今になって急に思い出した苦い記憶が。
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あれは中2の時、読書感想文の宿題が出たので、"最近読んだ中でいちばん感動した本"を題材に感想文を提出したところ、先生に、「読書感想文というのはね、普通、芥川とか川端とか夏目漱石とかで書くものなのです。内容が良くてもこれだと点数になりません」と呼び出されてお小言を言われたのだ。
何で書いたか?-忘れもしない、ディック・フランシス著『混戦』である。世界的ベストセラーとなった競馬シリーズの一作だ。当時、ちょうどこのシリーズにはまっていたのと、この作品は彼の作品群の中ではやや地味ながらも、昨年のCSファイナルで千賀投手が森捕手になげた渾身のカットボール※みたいなクゥーーーというラストで、思わず泣いちゃったくらいの佳作。ミステリーで感動して泣くんですよ、と、興奮して、思わず感想文の題材にしてしまったのだ。
結果は、書き直しこそさせられなかったが、「受け入れられない」というものだった。
確かに今思えば、海外ミステリーで読書感想文を書くというのは、”一般的”ではないから、愚かな(ある意味素直な)子供だったのを恥じるべきなのかもしれないが、
・出版物を題材にそれに対する感想をその時点での国語力をいかして論理的かつ感情に訴える形できちんと述べられるか。
・その著作物に本当に心が動いた、などの純粋な動機があるか
といったことが、「読書感想文」の本質ではなかろうか。
加えて言うと、ディック・フランシスの競馬シリーズは海外ミステリーにカテゴライズされるものの、女王陛下の騎手を務めた後に空軍パイロットとして戦争を経験、その後世界的なベストセラー作家として活躍、女王陛下から称号も賜ったくらいの書き手である。ミステリーとはいえ、世界的に評価されている作品なのであり、ミステリーはエンタメ、エンタメは感想文の題材にならない、とは短絡的過ぎではないか。(あと、イギリスで「競馬」といえば重要文化財みたいなものだし)
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とはいえ、中2の私にはそこまで論破できるスキルも度胸もなく。
でも、全然納得はしなかったので、はっきりとこのようには伝えた。「先生、私はそうは、思いません。どんな本で感想文を書いてもいいと思います」
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その後の学生生活においても、このようなプチ反抗(本人は反抗と思っていない)を繰り返し、何とか過ごすも、極めつけが学生生活の締めくくり、卒論。
「提出したテーマだと担当できる教授がいないからテーマを変更しろ」と強要され唖然・失望するも、そこは素直に従いテーマを変更。卒論も期日内に提出(1万字以上、英語で、が母校の卒論の条件だった)したが、口頭試問の際にコピーを持参せず、これまた、「口頭試問に自分用のコピーをもってこないとかアナタしかいませんよ!ありえませんっ!!内容はAだけど、Bにします」と減点されるお粗末な学生生活のエンディングであった。なお、コピーを持参しなかった理由については、ノー天気だった、というのがいちばんだが、苦労して書いた卒論の内容は全部頭に入っていたので、手元にコピーがなくても完璧にこたえられる自信があったから。実際、淀みなく答えたはず。なのに、「B」。
ちなみに、教授としても人としても大嫌いだったその女性教授への私の捨て台詞もちゃんと覚えている。
「最後の一年でアカデミックの世界に全く未練がなくなったので、社会に出て頑張ります」
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ミステリーマニアの私のオススメの名筆・ディック・フランシス氏の競馬シリーズ。基本全部面白いが、特にマストは、デビュー作の『本命』、『度胸』『興奮』『大穴』『血統』『罰金』『重賞』『利腕』『名門』『標的』このあたりが秀逸。日本語の題名も良い。翻訳者の菊池光さんのほうが先に亡くなられてしまったのが残念。なお、競馬に興味がなくても問題なく楽しるのでご安心を。
#キャプション
ディック・フランシス自伝とファンブック。
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